タカネットサービス創業15周年
TNS2.0からTNS3.0へ
西口高生社長に「これまで」と、
「これから」を伺いました

トラックの売買、リース・レンタル、整備、陸送をワンストップで提供する株式会社タカネットサービス(本社:神奈川県横浜市、代表取締役:西口高生)は6月5日に創業15周年を迎えました。2009年に中古自動車の買取販売を目的として横浜市西区に産声を上げて以来、東日本大震災や新型コロナ禍、そして足元における2024年問題と、幾多の難局に直面しながら的確な経営判断とスピーディーな事業運営とで乗り越え、24年5月期では年商110億円越えへの成長を果たしました。そこで改めて、西口高生社長に創業からの歩みを振り返っていただくとともに、今後の展望について伺いました。

カネットサービスを創業した経緯について、改めて教えていただけますでしょうか。

西口高生社長
西口高生社長(以下、西口)
当時、私は業界新聞のシンクタンクの責任者として、物流各社へのコンサルタント業務に従事していました。ある時、顧客であった中古車販売大手から中古トラックの買取販売事業に参画しないかとのお誘いをいただき、この事業を手掛ける子会社に取締役の立場で転職しました。日本の中古トラックは品質の高さなどから海外市場で人気が高く、業績も急成長をはたしたのですが、そこに起きたのがリーマンショックでした。海外市場が急速にシュリンクしたため、親会社の意向で中古トラックの買取販売事業から撤退することになってしまったのです。しかし、その会社にはすでに多くのお客様とのお付き合いがあった上に、私自身が中古トラックの市場に大きな将来性があると確信していたため、関係者と議論や検討を重ねた末、09年に独立し、タカネットサービスを創業したという次第です。

の2年後に、東日本大震災に遭遇しました。

ヤマショウ物流のダンプカー
西口 昵懇にしていたお客様が宮城県石巻市におり、その関係で、瓦礫の撤去にダンプカーが足りないとの声を受けました。そこで石巻に当社の第1号支店を出し、中古ダンプカーをかき集めて地元の運送会社にサブスクリースを始めました。お客様が営業ナンバーを付けて一定期間使ってもらい、それが終わったら当社に返してくださいというサービスだったのですが、使用場所が被災地という過酷な環境であったため故障が多発し、リース元である当社が多額の修理費を負担する流れとなり、収益が思ったほど上がりませんでした。
それならば、と思い切って新車のダンプカーを入れてみようと発想を変えました。新車ですとメーカーによる1年保証が付いており、しかも新車なので故障も少ない。保証期間の1年が終わったら引き取って中古ダンプカーとして当社が販売する─。このビジネスモデルは、ちょうどトヨタ自動車が展開している新車のサブスクサービス「KINTO」と同じ事業フレームです。これが結果として、今日の投資事業を含めた当社のなかに綿々と続く事業の基礎的なものとなりました。

の後の経営も、決して順風満帆なものではなかったと伺っております。

西口 東日本大震災後、新車のサブスク事業は大きく伸びて、私どもは新車のトラックを日本で一番購入する会社となりました。そして19年2月には、東京証券取引所のTOKYOPRO Marketへ株式を上場しました。しかし、同年10月に消費税率が8%から10%に引き上げられたことで消費が冷え込み、さらに20年1月から始まった新型コロナウイルス感染症の拡大と繰り返された緊急事態宣言による社会経済活動の停滞を受け、新車のサブスク事業を含む当社のビジネスも大きな影響を受けました。その結果、上場企業として恥ずかしい赤字決算となってしまいました。心ない筋からは、当社に対するネガティブな情報も流されたりしました。しかし一方で、私どもには含み益を持ったトラックを保有しているという強みがありました。こうしたなか、ある外資大手金融機関が当社のビジネスモデルのポテンシャルを高く評価していただき、これが呼び水となって市場の見方も再び好転しました。 新車さえ入ってくれば、一気に収益をつくれます。おかげさまで、その時には過去最高益を達成することができました。

ころが程なく、上場廃止という決断を下されます。

物流
西口 サブスクリースが再び順調に回り出すと、今度は、トラックの減価償却を欲しがるニーズが現れました。ちょうどコロナ禍で、エンドユーザーに商品を届ける“ラストワンマイル”サービスが人々から重宝されたこともあり、投資家の関心が物流セクターに寄せられるようになったのです。 当社からすれば、運送会社などの「売り」のお客様と、こうした投資家の「買い」のお客様が付いたことで、資金が上手く回転し出しました。
すると、上場することのメリットとデメリットを改めて意識するようになりました。人に例えれば、四半期ごとに健康診断書を開示して、ステークホルダーでもない人から色々と言われ続けるのであれば、思い切って上場を取り止め、そのエネルギーを新規事業の開発などに使った方が良いのでは、と考えるようになり、最終的には21年9月末日付で上場を廃止しました。折からのコロナ禍で、トラックが非常に求められる市場環境になったことも、決断の背中を押しました。

しく教えてください。

タカロジ
西口 新型コロナウイルス感染症の広がりで、皆さんが買物に気軽に行けなくなりました。そこで急成長したのが「Uber Eats」などの宅配サービスと「Amazon」などのEC(電子商取引)通販です。頼んだ荷物が明日着くというサービスが皆さんから支持されました。これを物流業の観点から見ると、需要が予測ではなく、いきなり湧くという特徴があります。すると何が起きるのか? トラックの動く頻度が高まるのです。オーダーが入るたびにトラックを動かさなければならなくなり、運送会社は喉から手が出るほどトラックを求めるようになりました。ところがコロナ禍による半導体不足もあってトラックの場合、新車の納期が読めなくなり、中古車も一気に品薄になったのです。つまり、私どもからすれば、東日本大震災に続いてコロナ禍も、ビジネスには追い風として働いたのです。そして会社の業容拡大につながったのです。

合他社も登場するなか、タカネットサービスのコアコンピテンシー
(企業の核となる強み)は何だとお考えですか。

月刊トラックランド
西口 一つは他社にない事業部門の存在、具体的にはマーケティングの力です。私がもともと業界新聞の営業部におり、お客様からの販売促進やマーケティングの相談に乗ってきた関係で、広告、広報、イベントなどをすべて含めた宣伝というもののセオリーを熟知していたことが、他社との差別化につながりました。当社設立後にもいち早く、マーケティング部門をつくり、そこで隔月発行している情報誌『月刊トラックランド』などは、一般のメディアが有料で制作しているような品質でないかと自負しています。いずれにしても、こうしたお客様に上手く訴えかけるセクションを持っているからこそ、ライバルが次々と登場するなかでもトップを走れているのだと考えています。
もう一つは、フルアセット経営を行っていることにあります。世の流れ的にはご承知のように、資産をなるべく保有せずに業務を遂行するノンアセット経営が「優れている」と持て囃されています。しかし私どもは、車両の整備も陸送も、すべて自分たちのグループ会社で実施しています。フルアセットにこだわる理由は、納車品質の向上のためです。例えば「明日、車両を届けて欲しい」と急に言われても、整備や陸送を外部に委託していたらそれは難しい。自分たちで、一気通貫で動ける組織がないと、こうしたお客様の声に応えられません。しかも、こうした要望に応えられないと、オーダーが二度と来なくなるという時代です。ノンアセット業者が大多数を占めるなか、フルアセットで戦うことは、アニメ『巨人の星』で大リーグ養成ギブスを付けてゴルフをするようなものですが(笑)、あえて逆張りでフルアセットにすることによって、お客様のオーダーに対して自分たちが責任をもって応えることができている。これも、他社にない私どもの強みであると捉えています。

のようなユーザーオリエンテッド(顧客第一主義)の姿勢を、
組織として貫けている秘訣はどこにありますか。

メンテナンス
西口 柔軟性ではないでしょうか。他社の組織を見ていないので断言はできませんが、柔軟性は高いと思います。考え方の柔軟性については、確実に持っています。先ほどからトラックの新車を取り扱いし始めたことが当社を変えたと申してきましたが、実はこのところ、新車を巡る環境が変わってきています。トラックメーカーが以前ほど、私どものような量販企業に新車を売らなくなってきているのです。メーカー側は少しでも利益を取りたいのだろうと想像していますが、徐々に新車が安く入手できなくなってきているのです。すると、新車によるリースビジネスが、従来のような右肩上がりの成長曲線を描きにくくなります。ではどうするか、と検討して決めたのが当社創業の原点に返って中古車ビジネスにもう一度注力していこうということでした。これも逆張りの発想と言えるかも知れません。
そもそもトラックに対してお客様が求めている基本的部分は、「安い」「壊れない」「長く使える」の3点であろうと思います。新車がなかなか手に入らないのであれば、当社がフルアセットで保有している整備工場を活用し、古いトラックを、新車と同程度の乗り心地や安心感が確保できるまでキレイにリコンディションして市場に出せばいいという発想です。これに当社の金融手法を組み合わせて企画商品化したのが「リフレッシュトラック」というパッケージで、新車の約半分のコストで乗れる再生中古車です。お客様からすれば、価格が手頃な上に中古トラックに付随する不安も払拭されている。新車購入と並ぶもう一つの買い方となります。実際、「リフレッシュトラック」に対しては今年1月の発売以来、非常に多くの引き合いを受けており、手応えを感じています。これも、当社ならではの柔軟性が発揮された一例ではないでしょうか。

後の展望について伺いたいと思います。

西口 今、フルアセットで行っているトラックの売買やサブスクリース事業をどこまで大きくしていけるかという点と、新たな中核事業へと育ちつつある投資事業のさらなる成長の速度がカギになります。時代の変化のスピードが速いなか、それと同じスピードでアセットを大きくしていくことは正直、非常に難しいだろうと予想しています。しかし投資事業の「投資deスグのり」が、21年11月の発売からわずか2年半で累計販売額が70億円を突破したようにニーズが高く、アセットを大きくするよりも早い速度で拡大していけそうです。現時点の計画では、およそ3年後に連結売上高300億円くらいの企業体を目指していき、そのうちの半分を投資事業によってまかなっていきたいと考えています。

元の年商のおよそ3倍という目標ですが、
その実現のために必要なリソースは何だとお考えですか。

タカネットサービス
西口 まずは整備力の向上です。これまでは新車を主に扱っていたため、整備力もそれに応じたレベルでした。今後は「リフレッシュトラック」など、当社の新しい商品パッケージに対応できる整備力を付けていかねばなりません。整備士をどう集めて、育てていくかという部分が非常に重要になってきます。
もう一つは、2024年問題にも絡むトラックドライバーに関してです。ドライバーの確保がさらに難しくなると予想されるなか、政府は今般、特定技能外国人の対象分野に自動車運送業を追加する方針を閣議決定しました。そこで私どもとしても、当社のお客様であるトラックユーザーの事業の活性化を促していくために、この運転業務を供する特定技能外国人をお客様のもとに派遣する新たな事業を立ち上げる 計画を詰めています。この人材派遣事業も、連結売上高300億円という目標のなかに組み込んでいます。これが実現すれば、物流業界にとっても大きなトピックになろうかと期待してします。
top